羊と鹿と狼と

パソコンでは出てこない漢字の一つに、鹿を三つ合わせて[ソ](略字『麁』)と読む漢字があります。

[おおざっぱ][細かくない]という意味で、これは、鹿の群れの様子を由来としています。

身を寄せ合って移動する羊の群れと違い、鹿の群れは、一頭一頭がかなり自由に行動しています。羊の密接な群れと比べて、鹿の群れは、おおざっぱな距離感覚で動く集団だということです。

その羊や鹿の天敵でもある狼も、群れで行動する動物ですが、群れから離れた狼を、

[一匹狼]

[はぐれ狼]

と表現しています。

「似ているけれど、何となく違う」

そんな思いを、漠然と抱えていました。

 

それが、以前、とある繁華街にある駅前広場で、

「俺はずっと一匹狼で生きてきた」

と道行く人に声高に言うホームレス風のおじさんを見かけて、

「この人は、一匹狼ではなく、はぐれ狼なのでは……」

と、わかったような気がしました。

自分の意思に関わらず群れからはぐれたか、はじかれたか、あるいは群れにいることをよしとせず、自ら離れて生きているのか……

 

羊のように、密接な群れの中で生き続けるのか、仲間との距離をある程度置く鹿のように生きるのか、それとも、一匹狼として世の中を生きていくのか……

でも、うっかりすると、一匹狼を夢見る迷える子羊になっているかもしれません。

もしそうだったら、たちまち狼の餌食にされて……(キャーこわ〜い!)

 

12年に1度、おんなじことを考えています。