禍福を分ける言葉

タレントの太川陽介さんと蛭子能収さんが、ゲストの女優と、ローカルバスで旅をするテレビ番組があります。

ローカルバスを乗り継いで、制限期間内に無事に目的地に到着できるかどうかというところが眼目の番組ですが、途中、いろいろなことが起こります。

出演者の間にも、波風が立ちます。

太川「謝ってください」

蛭子「ごめんなさい」

女優「蛭子さんって、素直なんですね」

蛭子「いや、素直じゃなくて、面倒くさいでしょ」

日常でもありそうな光景ですが、蛭子さんは、素直な人ではなく正直な人だと私は思います。

また、その、自分の気持ちを隠しておけない正直なところが、蛭子さんの魅力の一つになっているのでしょう。

視点を変えると、

[口は災いの元]

という言葉のお手本を、蛭子さんが示してくれているようでもあります。

 

[口は災いの元]という言葉は、昔からありますが、

[口は幸いの元]

という言葉は、日本にはありません。

日本が培ってきた歴史と文化によって生み出された言葉ですから、この言葉の持つ、

「よけいなことは口にするな」

という戒めを、疎かにすることはできません。

よかれと思った発言が、却って災いをもたらす可能性を考えれば、沈黙を守るのが賢いのかもしれません。特に、日本の組織の中で生きていこうとすれば、[口は災いの元]は、金言とも言えるでしょう。

しかし、言葉によって、救われたり背中を押されたりすることがあるのも事実ですし、言葉を発しなければ、相互の理解は得られません。

ここは、言葉を変えて、

[口は禍福の元]

と承知して、よかれと思う言葉を口にするのがいいのではないかと思いますが、いかがでしょう。

もし、それで意に反した結果となった場合には、

「ごめんなさい」

と謝れば、だいたいは収まります。

もちろん、

「面倒くさいから」

は、禁句ですが……