背徳的道徳か道徳的背徳か……

昨年、話題になったドラマ《昼顔》は、不倫をテーマにしていましたが、最後は元の鞘に収まり、

『不倫は不毛』

という戒めを視聴者の心に刻んで終わりました。

 

しかし、本当に不倫は不毛で誰も幸福にしないものなのでしょうか?

 

たとえば、同じく昨年人気を博したNHKの朝の連続ドラマ《花子とアン》に登場した白蓮さんは実在の人物で、不倫のあげく駆け落ちまでして恋愛を成就させました。

たとえば、昨日、NHKの《歴史ヒストリア》で取り上げられた谷崎潤一郎先生は、妻を持ちながら人妻との恋愛を成就させています。

たとえば、北原白秋さんは、姦通罪で投獄されながらも、最後は隣家の人妻と一緒になりました。

背徳をテーマにしながら虚構のドラマでは道徳的な結末が用意され、一方に背徳を乗り越えて結ばれる二人が存在するという現実があるという事実は、まさに、

『事実は小説より奇なり』

いえ、

『事実はドラマより非なり』

と言えます。

ちなみに、事例として並べましたのは文学者ばかりですが、谷崎潤一郎先生も北原白秋さんも、その作品が国語の教科書に掲載されています。

背徳的であるように見せながらドラマは道徳的で、道徳的であるはずの学校の教科書には、背徳の作家の作品が載っている……

さらに申し上げると、もっとも道徳的であるはずだと視聴者が思っているであろうNHKが、実は背徳を放送している……

 

念のために申し上げておきますが、決して背徳を奨励している訳ではありません。

ただ、ちょっとだけ……