ささやかな時代劇論

神社が、二十年〜二十五年ごとに社殿を造りかえる理由の一つに、技術の継承があるそうです。

子供が育った時分に、親がその技を伝え、その子がまた自分の子供に技を伝える。

 

技術革新によって、ドラマや映画の制作技法も進化しているようですが、継承されるべきものが伝えられなかったのが、時代劇です。

かつて、《水戸黄門》を代表に数多くの時代劇が制作されましたが、視聴率の低下とともにテレビからも映画からも、(NHKは別にして)時代劇は長らく姿を消してしまいました。

『勧善懲悪』などが受けなくなった時代の変化を視聴率の低下の原因とする意見が、当時、出回っていましたが、人気シリーズの看板や安直なストーリー展開、有名俳優の名前に頼った結果ではないかと、私は思っています。

その時代劇が、ここ数年、また放送されています。

子供の頃から時代劇に親しんできた者にはうれしい限りですが、たとえば、昔の時代劇では、誰かに声をかけるときには、

「◯◯様……」

「◯◯殿……」

「もし、お武家様」

「お女中、ちと、ものを尋ねるが……」

などと、身分や場面によって使い分けられていたのが、昨今は、

「あの……」

としか言いません。

着座した侍が刀を右側に置くことさえ知らない若い人が制作を指揮しているそうですから、そんな脚本にも気づかないのかもしれません。

 

神社に比べると、はるかに歴史の浅い時代劇ですが、衰退の憂き目を見た挙げ句、その知識や技術が伝承されていなかったことがうかがえます。

 

こんな話をしては、周囲から、

「あんさん、今時のお人やおまへんな……」

とか、

「おたく、生まれた時代を間違えましたな……」

てなことを言われております。

ブログでは、そんなツッコミが入ることはないと思って安心して書きました。