そうなんですよ!

NHKの『週刊こどもニュース』をご担当されていた頃から、現在に至るまで、池上彰さんのお話、解説には人気がありますが、その魅力の一つに、

「そうなんですよ」

という、お決まりの言葉があります。

お気づきの方も少なくないと思いますが、この台詞は、相手の言葉をそのまま受け入れる言葉で、コミュニケーションを円滑に運ぶ、魔法の言葉だと思います。

 

昨今は、コミュニケーション能力が重視される世の中で、そのためには、聴き方が大事だと言われます。

相手の言葉に頷く、そのままおうむ返しにするといったテクニックが広く知られるようになりましたが、にもかかわらず、やっぱりコミュニケーション能力、聴き方の重要性が説かれているのはなぜでしょう?

 

日本古来の武術に、柔(やわら)、合気道がありますが、これらの本意は、相手の力を利用して自分の身を守ることにあります。

ところが、オリンピックの競技になった柔道では、技をしかけなければ、減点されて負けてしまうスポーツになってしまいました。

 

聴くという行為も、本来は相手の言葉をよく聴くことによって、相互理解や問題解決を図るものです。

それが、コミュニケーションの一つの手段となって、純粋に聴くことができていない方が多いのではないかと感じてます。相手の話を聴いているようで、実は自分の意見を挟む隙をうかがっている……

 

柔道に例えると、技を返そうと身構えているために、自然体で相手に向き合えていない状態、肩に力が入っている状態と同じではないかと思います。

 

そんな中途半端な状態で聴くぐらいなら、池上さんのように、たとえ相手が的を外した言葉を発したとしても、

「そうなんですよ」

と大胆に受け取る方が、相手の心を掴むのではないかと思います。

 

「ははーん。このブログを書いてるあんたも、そうやって、たくさんの人を誑かしているんだな」

そう言われると、

「……そ、そうなんですよ」