「あなたはどちらですか?」

同じような意味を持つ別の言葉を、私たちは使い分けています。

たとえば、お巡りさんと警察官は、どう違うのでしょうか。

拾った落とし物を届けるために交番の扉を開けるときには、

「お巡りさん……」

と、呼びかけ、迷子の子供を見つけたときに、自転車に乗った警察官が通りかかると、

「お巡りさ〜ん」

と、呼び止めます。

でも、こういう場面で、

「警察官さ〜ん」

なんて呼びかけることはありません。

お巡りさんは、たいてい交番や派出所にいて、地域の住民の安全を守ります。

安全を守るのが、お巡りさんだと言えそうです。

 

警察官という言葉が使われる場面は、たとえば、

「警察官として悪を見逃すことはできません」

と言うときや、

「警察官募集」

といったポスターなどで使われています。

決して、

「お巡りさんとして悪を見逃すわけには……」

という使い方はされませんし、

「お巡りさん募集」

などというポスターを見かけることはありません。

警察官には、毅然として正義を守るイメージがあるのではないかと思います。

 

そういったイメージを広げていくと、

パトカーに乗って現場に急行するのが警察官で、汗をかきながら自転車に乗って駆けつけるのがお巡りさん……

窃盗犯を逮捕するのが警察官で、泥棒を捕まえるのがお巡りさん……

「おい、こら」と不審者に威圧するように声かけるのが昔の警察官で、

「ちょっとよろしい?」と職質問をするときに声をかけるのが、今の警察官で、

「変わったことはありませんか?」と日頃から住民に声をかけているのが、お巡りさん……

事件を解決して真相を解明するのが警察官で、本人も気づかないうちに事件を未然に防いでいるのが、お巡りさん……

でも、出世しそうなのは警察官で、庶民に愛されるのはお巡りさん……

 

議員と政治家、先生と教師(教員)、俳優と役者、絵描きと画家、落語家と噺家、マニアとオタク……

「あなたはどちらですか?」

なんて、その人たちに質問すると、面白いかもしれません。