桂米朝師がお亡くなりになりました。
衰退した上方落語の世界で、個性あふれる弟子を何人も育て、埋もれていた古典落語をいくつも再生されました。
弟子たち一門はもちろん、数多くのファンに慕われ、アンドロイドまで作られてしまうほど、人望も厚いお方でした。
その米朝師匠の魅力の原点は、いったい何だったのでしょうか。
衰退した戦後の上方落語界にあって、
『上方落語を復興しなければならない』
という、一途な使命感だったのでしょうか。
それとも、
『上方落語を多くの人にもっと知ってもらいたい』
という、ひたむきなの願いだったのでしょうか。
あるいは、
『上方落語を復興させて、富と名声を手中に入れてやろう』
という、大きな野望だったのでしょうか。
いずれにせよ、そのままでは滅んでしまうだろう世界に身を投じるなんて、いわゆる賢い人間の選択ではありません。
だからこそ、その真摯な米朝師匠のお姿に、多くの人が魅了されたのでしょう。
それがわかっていながら、いったいボクは何をしているんだろう……
はたしてオレはこのままでいいのか……
どうしてアタシはこうなんでしょう……
米朝師匠の最大の功績は、上方落語を復興させたことではなく、多くの人の人生に、数多の教えと深い感銘を残されたことではないかと思います。
米朝師匠のご冥福をお祈りいたします。