王様の私

「才色兼備とは、あなたのような女性のためにあるような言葉ですね」

と、こちらがほめたつもりでも、そうは受け取ってくださらない方がいらっしゃいます。

「本当の自分はそうじゃない……」

という思いを持たれている方には、どんな称賛もそう受け取ってはもらえません。

それどころか、

「この人は私を理解していない……」

「誰も、本当の私をわかってくれない……」

 

反対のパターンが、落語に見られます。

「あんさん、普通のお方やおまへんな〜」

「そないにほめられたら、照れます〜」

 

「普通のお方やない」

「ただ者やない」

「今時のお方やない」

落語では、たいがい、

「お前はアホか」

という意味合いですが、それを受け取るアホは、

「あんたはそこらの凡人と違って個性的や」

という称賛の言葉として喜びます。

 

ですから、ほめるときには、見た目で誰もが口するようなほめ言葉よりも、

「あなたはとっても個性的で素敵な人です」

という意味をこめて、

「あなたは普通の人ではない」

「あなたはただ者ではない」

「あなたは今時の人ではない」

と言ってみる。

 

ほめられる方も、そう言われたら、

「私は個性的で、時別な人間なんだ」

と受け取って喜ぶと、人間関係もよくなるように思いますがどうでしょうか。

 

私も以前、言われたことがあります。

「あなたは今時の人ではありませんね。中世のヨーロッパでは由緒ある王家の血筋を引く高貴な家に生まれた人で、世が世なら一つの国を治めているはず……」

「いや〜、そないにほめられたら、照れてしまいます〜」

てなことを言いながら、それからずっ〜と、王様気分で生きております。