佐藤青南さんの『行動心理捜査官・楯岡絵麻』(宝島社)シリーズには、危機に瀕した動物の、三段階の行動パターンが紹介されています。
第一段階がフリーズ。
いわゆる固まってしまう状態です。
第二段階がフライト。
逃避行動です。
第三段階がファイト。
戦闘態勢に入ります。
小説では、美貌の主人公が容疑者の嘘を見抜き、追いつめていきます。その過程で容疑者が見せる、これら三段階の行動が示されています。
実際の心理学が基盤になっているようですが、現実は、そこから変化しつつあるのではないかと思います。
まだ早い時間、居酒屋で、どういうわけか靴を脱がずに座敷に上がろうとした中年女性のお客に、
「そこは、土足では……」
と注意を促した若い女性店員に、その中年女性は、
「あんたみたいな非常識な者が何を言う!」
と、いわゆる逆ギレしたそうです。
これを見ていたと言う知人は、声を荒げることのない温厚な人ですが、さすがにそのおばさんに、
「あんたの方が非常識だろ!」
と、言おうかと思ったそうです。
最近、自分の非を棚に上げて、いきなり第三段階のファイトに及ぶ輩が問題視される話題を見聞きすることが増えたように思います。
私は、フリーズ、フライト、ファイトと、ちゃんと三段階を踏んでいますから、いたって普通の人間だと思っています。
ということを、非常識な逆ギレおばさんの話をしてくれた知人に言ったところ、
「それは間違うてる。あんたは普通の人間やない!」
「どこが普通と違う!」
と怒ったら、
「ほら、いきなりファイトー!」
仕方がないので、
「いっぱーつ!」