いい人をやめるには……

先日、職場で、仕事と介護を両立されている女性が、

「いい人、やめようかな」

ポツリとおっしゃたので、

「まだ、やめてなかったんですか」

と応じると、にっこりされました。

 

曽根綾子さんは『いい人をやめると楽になる』(祥伝社)という本を出していらっしゃいます。

でも、〈いい人〉をやめるのには、思い切る勇気が必要かもしれません。

 

若い頃、

「あなたはとてもいい人よ。でもね……」

と、何度か苦い思いをさせられて、

「ああ、〈いい人〉は〈いい男〉にはかなわいんだ……」

そう悟り、

「絶対、〈いい人〉になんかなるもんか」

と、決心しました。

 

あれから、はや数十年。

そうは言っても、持って生まれたモノが違いますから、どうがんばっても〈いい男〉にはかないません。

ところで、最近の〈いい男〉は、〈いけてる男〉、〈イケメン〉と言います。

そこで考えました。

〈いけてる男〉にもなれず〈いい人〉もやめるとなると、あとは〈いけない男〉になるしかない。

 

いきなり〈いい人〉をやめるには、勇気も必要かもしれませんが、やめてどうするかということがわからなければ、やめられないかもしれません。

やはり、やめてからどうするかという理想が必要です。

 

そこで、

「どうせ〈いい人〉をやめるなら、〈いけない嫁〉とか〈いけない娘〉とか〈いけない女〉とか〈いけない男〉なんかを一緒に目指しませんか」

そう言うと、彼女は再びにっこり微笑んで、

「もう少し、いい人でいます……」