『あばばばば』を拵えてからしばらくして図書館で芥川龍之介全集を何気なく手にしてみると、そこになんと『あばばばば』という名の短編小説があるではありませんか!
私が捻り出しました『あばばばば』は、生き返って化け物となったばあ様の叫び声ですが、芥川龍之介氏の『あばばばば』は、赤子をあやすときの言葉です。
この『あばばばば』は、女性が母になる、その変貌ぶりを象徴していますが、芥川龍之介氏の短編には、高校の教科書でおなじみの『羅生門』や『鼻』とは別に、『煙草と悪魔』や『魔術』といった、夏向きの不思議な話がございます。
『煙草と悪魔』は、西洋の鐘と日本の梵鐘の違いがあったり、日本に渡ってきた悪魔がその後、幻術を使う果心居士だったりと面白く、『魔術』も、人間の欲がどういうものかということを、これも面白く記述しています。
寒いオヤジギャグよりこちらの方が、省エネ納涼脳みそには有効かと思います。
さらに、おなじみの『蜘蛛の糸』なんかには、
「釈迦のくせに気まぐれで亡者の心を持て余すな!」
とか、
同じく『杜子春』には、
「じゃあ、杜子春を試した仙人は、苦しむ親を見殺しにしたんだな!」
とか、不埒なツッコミを入れて、
「ひょっとしたら芥川龍之介さんの罰があたるかもしれない……」
と心配するだけで、かなりぞくぞくするのではないかと思います。