『書いた手紙をそのまますぐにポストに入れてはいけない』
という言葉は、
『言いたいことは明日言え』
という言葉と同じで、
感情的になって書いた手紙をポストに入れてから後悔しても手遅れですし、同じく感情に任せて発してしまった言葉によって取り返しのつかない事態になることもあります。
でも、日本では言いたいことを言えないまま日々を過ごしている人の方が多いのではないかと思います。
宮部みゆきさんの『淋しい狩人』(新潮文庫)に所蔵されている『うそつき喇叭」』には、古書店で童話を万引きした小学生が虐待されていたことを告発したかったのではないか、という内容の短編小説です。
昔、仕事もせずに酒を飲む父親から、お金もないのに酒を買ってこいと言われた子供が、酒屋で酒を盗んで捕まったという話を聞いたことがあります。
これも、『うそつき喇叭』と同様の心理が働いていたのではないかと思います。
「本人がそれを口にしないから……」
という理由で、言葉だけで物事を判断しようとするところに、現代社会の問題の一つが潜んでいるように感じます。
そこで、せめて職場においては、しっかりと言っておくべきだろうというところではきちんと言っておこうと考えて、
「そこは、それ、その……あの……言いたいことは明日言え、てな言葉もありますから、まあ、明日、改めて話を……あ、明日、お休みでしたね……」
「ま〜た、わけのわからんことを言う……」
と、あきれられてしまうところが、辛いところで……