「御上にも御慈悲がある」
昔の時代劇でよく耳にした台詞です。
これから考えると、基本的に御上には慈悲がないことになります。
落語の『ぜんざい公社』では、お役所というところは先に甘い汁を吸ってしまう存在になっています。
同じく落語の『大名将棋』では、将棋で負けそうになると、ルール無用で勝ちに行こうとする殿様が、おもしろおかしく演じられます。
上に立つ者は庶民の苦しみがわからぬモノ……
というイメージがあるせいかもしれませんが、それでもときどきあきらかに横紙破りだろうと思われる事象が耳目に触れることがあります。
あるいは、今ままで御上の御慈悲によって目こぼしされていたことを、あたかも当たり前のように主張するケースを知ることがあります。
しかし、そうかといって、
「御上のやることは間違っている!」
と義憤にかられたように声高に主張する御仁に正面切って、
「ああた、それはまち〜(と急に聞こえないような声になって)かもしれんないじゃ〜ありませんか」
なんてことを言おうとしないのは、私がまだ甘い汁を吸わせてもらったことがないから、というわけでは決してありませんよ〜っと……