新しい《三つの袋》

『三つの袋』は結婚披露宴のスピーチの定番です。

「〈給料袋(胃袋)〉〈堪忍袋〉〈お袋〉を大切にすることが、結婚生活を持続する秘訣です」

と、慣れた口調で話される方は、たいてい男性ではなかと思います。

でも、そうした主賓のスピーチを、たとえば親戚のおばさんなんかは、どんな思いで聞いていらっしゃるのでしょうか。

 

共働きでないと生活が維持できない現代です。だから、〈給料袋〉の獲得は、ウェディングケーキ入刀以後の、二人の重要な共同作業になります。

〈堪忍袋〉も大切ですが、破れそうな〈堪忍袋〉を何度も縫い直す回数が多いのは、妻か夫か、どちらでしょうか。

亭主の〈お袋〉を大切にしているのは妻であって、義母であっても実母であっても倒れた〈お袋〉の介護の大部分を担うのは、やはり妻ではないかと思います。

 

「三つの袋の行く先は袋小路の結婚生活……」

なんてことを思いながら、親戚のおばさんなんかはお聞きになっていらっしゃるかもしれません。

 

また、定番の『三つの袋』をスピーチで話すつもりが、先に他の来賓にされてしまって困ったという方もいらっしゃるかと思います。

そんなときには、慌てず騒がず涼しい顔で、

「結婚生活には『三つの袋』が必要です。困ったときの〈知恵袋〉。ときどき妻に〈福袋〉。夫は家族の〈お守り袋〉。もちろん、大切なのは中身です」

親戚のおばさんも、少しは納得してくださるかもしれません。