このシーズン、電車やバスを待っておりますと、手にした傘で、多分、ゴルフのイメージトレーニングに余念のない方をお見受けします。
傘の柄を両手で持って振り上げながら、
「チャーシューメン」(ご存じない方はパスしてください……)
と振り下ろす格好は、明らかにゴルフの練習だと想像できます。
先日、右手一本で傘を振り上げいてた方を見かけて、
「ああ、右手の使い方のトレーニングをされていらっしゃるんだな……」
と察しをつけました。
野球でも、バットコントロールのために片手で素振りの練習をしていますから、きっとゴルフでもそういう練習があるんだ、と思いながら、少し離れたところから眺めておりますと、その御仁は、何かぶつぶつ言いながら、何度も傘を振り上げては、それを振り下ろしていました。
少し近づいてよく聞いてみますと、
「ええい、これでもか!(ビシッ!) これでどうじゃ!(ビシッ!) まだ足りぬか!(ビシッ!)……」
その姿を見ておりますうちに、その傘がしなって誰かを鞭打つような錯覚に陥ってしまいました。
時代劇で拷問する火付盗賊改の役人が盗人を拷問にかけて仲間の居場所を聞き出そうとするシーンのイメージトレーニングを、きっとされているんだな、と思いましたが、
「よくもわしに恥をかかせおったな!(ビシッ!) いつもいつも偉そうにしやがって!(ビシッ!)そのうちきっちりと思い知らせてやるからな!(ビシッ!)……」
次第に嬉々とした表情に変わっていく様子を見て、
「時代劇ではないようだけど、たいした俳優だなぁ」
と感心して見ておりましたが、周囲からはどんどん人が遠ざかっておりました……