三題噺・パンダのバイト

早速、お題をいただきました。

〈パンダ〉〈たこ焼き〉〈吸血鬼〉

 

着ぐるみの頭の部分を外しながら、

清「いやあ、それにしても人使いの荒い会社やな。いくらパンダの着ぐるみを着てお客さんに愛 想、振りまくだけや言うても、やっぱり休憩なしはきついな〜」

喜「まあ、そうは言うても、けっこうおもろかったで」

清「何がおもろいねん」

喜「そやかて、みな、喜んで寄って来るで」

清「そら、パンダは人気者やさかい、子供ら寄ってくるわ」

喜「寄ってくるだけやないで。小さい子供なんか、いろんなもんくれるで」

清「くれるけど、着ぐるみのこんな手ぇで、もらわれへんやろ」

喜「わい、さっき、たこ焼き、もろた。これ、食べて、言うて」

清「そやから、食べられへんやろ」

喜「うまかったで」

清「食うたんか!」

喜「そしたら、横からその子の兄貴らしい子供が、『あ、パンダがたこ焼き食うてる。こら、ニ セもんや』言うさかいに、『何言うてんねん。わいはこてこての大阪生まれのパンダや〜』言う たったら、『ほな和歌山のパンダはなんでササ、食べるんや』と聞くさかいに、『あら、中国か ら来たニセもんや』と言うたった」

清「お前、そんなええかげんなこと、子供に言うたらあかんやろ」

喜「そやから、ちゃ〜んと言うたで。よそで言うたらあかんでって」

清「あほ」

喜「いや、大人にはそんなこと言わへんで」

清「お前、何したんや」

喜「いや、若い女の人なんかも、きゃ〜てなこと言いながら両手広げて駆け寄ってくるさかいに、わいも両手広げて、ぎゅうって抱きしめて、ほんで、首筋にぶっちゅう!って、やったった」

清「お前、パンダのくせに、吸血鬼みたいなこと、すな」

喜「はははー、久しぶりに女、抱いた」

清「あほ」

男「ああ、今日はお疲れさんやったな。今日のバイト代、渡しとこか」

清「ああ、すんまへんな(もらって袋の中を確認して)……ちょっと待って。これ、だいぶん少 ないで。最初の約束と違うで」

男「まあ、税金やらなんやら引いてるさかいな」

清「税金って、それでも、これはあんまりやろ。だいぶ、ピンハネしてるやろ」

男「なんや、気にいらんかったら、辞めてもうてもええねんで。バイトの代わりなん て、いく らでもいてるさかいな」

清「えー、こらひどいこと抜かしやがるな。おい、会社ぐるみであこぎなことをしてるんちゃう か」

喜「え? 会社ぐるみ? 清やん、わいら着ぐるみやで」《パターンA》       

                                 (デンデン)

清「えー、こらひどい会社やな。ブラックちゃうか」

喜「清やん」

清「なんや」

喜「ブラックちゃうで」

清「ブラックやない? はたらなんや?」

喜「白黒や」《パターンB》

                                 (デンデン)