あてのない旅というのは、とてもいいものです。
その醍醐味が、旅立つ前にあるということは、かの松尾芭蕉翁も、その著書、『奥の細道』で述べているほどですが、それとはまた違った効用もあります。
たとえば、
「この仕事、明日までに仕上げておいてください」
なんてことを言われても、
「ごめんなさい。明日からあてのない旅に出ることにしていますから……」
てな、言い訳で、嫌な仕事を断ることができます。
たとえば、
「それなら、今夜中に仕上げてください」
なんて恐い顔で言われても、
「ごめんなさい。急に気が変わって、今夜、あてのない旅に出ることにしました」
てな、言い訳で、嫌な仕事を断ることができます。
たとえば、
「じゃあ、帰ってきてからでもいいから、この仕事、仕上げてください。いつ、帰ってくるんですか?」
「さあ、あてのない旅ですから、いつ帰ってくるかなんて、あてもありません」
てな、言い訳で、嫌な仕事を断ることができます。
ということで、あてのない旅のような人生を送ってしまっているという次第でして……
かの芭蕉翁もおっしゃいました。
「旅は人生である」
いや、
「人生は旅である」
だったかな……