三題噺・恋花

お題をいただきました。

《花火》《包丁》《鬼は外》

 

喜・こんばんは。

松・おお、喜公やないか。どないしたんや。

喜・ちょっと、包丁、借りにきたんや。

松・包丁? なんや、えらい、物騒やな。どないしたんや。

喜・ちょっと、切らしてしもて……

松・待て待て。お前、おかしな物言いしなよ。包丁言うたら、あら、切れるもんや。それを何や、切らしてるて……

喜・いや、切れへん包丁はあんねんけどな、切れる包丁がないさいかいに、切らしてる……

松・あほ。塩や醤油みたいに言うな。だいたい、ふだん、包丁なんか使わへんお前が、何を切るんや。

喜・スイカ。

松・スイカ?

喜・うん。

松・お前、スイカ、食うんか?

喜・うん。

松・おれは?

喜・松ちゃん、スイカ、食べるんか?

松・ちょっと待て。お前、スイカ、切るために包丁、借りに来たら、一緒に食べへんかっちゅうて、誘うのが友達やろ。

喜・けど、そない誘うて松ちゃんがほんまに来たら、わしらの食べる分が減る。

松・なんやと!

喜・と、清やんが言うてた。

松・なに、お前ら、おれに黙って、二人でスイカ、食う算段してんのか!

喜・二人やないで。

松・他に誰がいてるんや。

喜・花ちゃん。

松・花ちゃん? な、なんで、花ちゃんと、お前ら、スイカ食うことになったんや。

喜・さっき、清やんがな、線香花火とスイカ、持ってわいとこにやってきて、花ちゃんと三人でスイカ食べながら、花火しよう。お前、そう言うて花ちゃん、誘てこい、言うさかいに、わいが、松ちゃんも誘うたらどうや、言うたら、あいつは甘いもんが嫌いやし、それにあんな鬼みたいな顔でスイカは食えへんやろ、鬼は外や、て言うさかいに、ははあ、さては清やん、ほんまは、スイカが減るのがいややねやろって言うたったら、あほ、はよ、花ちゃんとこ行ってこい、言うさかいに花ちゃん、誘うて、さあ、そしたらスイカ切ろか、っちゅうときになって、包丁がない。喜公、お前の家にあるやろ、て言われてうちの中、探したけど、切れる包丁がなかったさかいに、松ちゃんとこに借りにきたんや。清やんと花ちゃんが待ってるさかいに、はよ、貸して。

松・あいつ、おれを出し抜いて、花ちゃん、口説くつもりやな…… よし、分かった。包丁はおれが持っていったる。

喜・ええ、そんんことしたら、清やんに怒られる。

松・包丁、持っていっても、スイカは食わん。その代わり、花ちゃんと花火はさせろ。

喜・ああ、それも止めた方がええわ。

松・なんでや?

喜・線香花火が、打ち上げ花火になってしまうやろ。

                       デンデン(オチA)

 

松・あいつ、おれを出し抜いて、花ちゃん、口説くつもりやな…… よし、分かった。包丁がオレが持っていったる。

喜・それは止めた方がええ。

松・なんでや?

喜・松ちゃんも清やんも、包丁より切れてしまうやろ。

                        デンデン(オチB)