それぞれの降車

先日、バス車内で、二人の女子高生が話をしていました。

違う高校に通っていた中学の同級生が、久しぶりに出会ったという感じで、一人はきちんと着こなした制服にギターケースを持ち、もう一人は制服を着崩していました。

 

その、制服を着崩していた方が、何やら自分のことを熱心にしゃべっていましたが、ひと息ついたところで、ギターを持ったもう一人が話し始めてすばらくすると、

「うるさい。静かにして」

と、着崩した方が機嫌悪そうに言いました。

 

言われた方が口をつぐむと、しばらくしてうるさいと言った方が、また機嫌よさそうにしゃべりはじめます。

確かに声も高かったこともありましたが、その様子に不快感を覚えたのでしょう。

「お前がうるさい。静かにしろ」

と、すぐ後ろにいた中年男性が注意しました。

注意されても無視してしゃべっていた彼女は、ギターを抱えたかつての同級生に挨拶をすることもなく、次のバス停でふてくされたように降りていきました。

ギターケースを抱えていた方は、注した中年男性を少し気にしているような素振りを見せながら、次のバス停で降りていきました。

 

そのとき、数日前に、久しぶりに一緒に飲んだ中学時代の友人の言葉を、ふと思い出しました。

「あれだけみんなでアホなことやってたのに、おれら、それぞれ別の電車に乗って、お互いが全然知らん駅に降りたんやなぁ……」