落語の『子ほめ』では、相手を喜ばせるために、年齢を二、三歳、若く言うようにアドバイスしています。
「あんさん、おいくつですか? ……え、五十? とはお若う見える、どう見ても四十七、八……」
それで喜んだ相手がするめで一杯ごちそうしてくれるそうです。
近頃は、女性の年齢を訊ねるのもセクシャルハラスメントになりますので、うっかり聞けません。
うっかり聞いてしまったときには、
「いやあ、いくつぐらいが最も魅力的なのかと、まあ、以前から疑問に思っていましたので、魅力的な女性を見かけると、つい、年齢を尋ねてしまうくせがありまして……」
と答えると、その女性との会話も弾むそうです。
男性芸能人の中には、いくつか若く年齢を詐称していらっしゃる方もおられるようです。
どういうわけか、人間には若さに対する憧れがあるようで、実年齢より若く言われて喜ばない人はいらっしゃいません。
でも、アタシは、年齢を詐称するまでもなく、若く見られます。
夜、繁華街を歩いておりますと、若い女性から、
「ちょいと、そこのお兄さん」
と声をかけられますし、職場ではちょいちょい、
「もっと大人になれよ」
と言われます。
二つ、三つどころか、三十も四十も若く見られます。
さすがにそれもどうかなと思っておりましたときに、
『四十を越えたら、男は年上に見られる方がよい』
という話を耳にいたしまして、それ以後、年齢を尋ねられたときには、実年齢より少し多めに答えるようにしています。
「ときに、あんさん、おいくつですか?」
「そろそろ八百歳になります」
「え? 八百歳。とはお若うみえる。どう見ても七百九十七、八……」
絶対に、実年齢より若く見られることはありません。
(え? だから、早く大人になれって……?)