独創の罠

かつて目にしたことはあっても、すっかり忘れてしまっているものは、多々あります。これは忘れてはいけない、と思っていても忘れてしまう仕事のあれこれを思い出すまでもなく、誰にでもあることかと思います。

でも、あるとき、それがふっと出てくることがあります。

出て来たものが、いつどこで何に触れたときのものだったのか、よくわからない場合も少なくありません。

もちろん、そんなことにさえ気づかず、すっかり独自の発想だと思い込むこともあるでしょう。

 

サノ某氏の考案した東京五輪エンブレムの原案は、かつて彼が目にしながら忘れていたデザインと酷似しているようです。

しかし、新しい何かを生み出そうとする我々は、そういったことにさえ注意を払わなければなりません。

独創を命とするアーティスト、クリエイターを名乗るなら、それぐらいの厳しさを己に課すべきです。

 

そんな独自の考えを、例の友人に披露すると、

「覚えてる?」

「何を?」

「かれこれ、十回ぐらい、キミとこんな話をしていることを……」