三題噺・金目教の壷

お題をいただきました。

『マッサージ』『骨董品』『シャッター』

 

清・ようやっと宿はとれたけれど、それにしても、この辺にはコンビニもないんやな。こんなことやったら、少々高うても、旅館の売店でなんぞ買うといてもよかったな…… あれ? あれ、商店街ちゃうか。……けど、なんや、寂しい商店街やなぁ。みな、店、閉めてるな。シャッター通り、いうやっちゃな…… しゃったあ! もっとはよ来たら開いてたんや…… しょうもないシャレや。誰も聞いてのうてよかった。……あ、あそこ、なんや、店、開いてるで。何の店やろ。……看板に……こ、つ、と、う……ああ、骨董屋や。うちのおばんが使うてたしびんてなもんも、買うてくれるんかな。……ごめん。

主・いらっしゃい。肩でっか、腰でっか。どこから揉みましょ。

清・どこから揉みましょって、ここは骨董屋やないんか。

主・へえ、元は骨董屋でしたんやけど、このご時世でっさかいに、今は、商売替えしてマッサージ、やってまんねん。まあ、まだ看板はそのままで、棚に骨董品も残ってますけど…… まずは、そこにうつぶせに寝てもうたら、さっそく揉ましてもらいます。

清・そうか。そんならせっかくや、ちょっと揉んでもらおか。(横になる)

主・ほな、揉ましてもらいます。(揉み始める)

清・ほんで、何か、まだ、骨董品の売り買いもしてんのか。

主・(揉みながら)へえ。

清・(揉まれながら)ほな、ちょっと買うてくれるか。

主・何でっしゃろ。

昔、昔、うちの、おばんが使うてた、しびん。

主・しびん? あの、おしっこ取る?

清・うん。

主・すんまへん。しびんはちょっと…… 古い壷や皿の方が……

清・ははは…… まあ、そうやな。……(棚の壷を見つけて)ああ、あんなんやな。それにしてもあの壷は、えらい古そうやな。

主・ああ、あれは、豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎と名乗っていた時代に京の町に流行った金目教が売ってた壷です。

清・金目教?

主・飛騨の赤影の活躍で滅んだ宗教団体です。

清・それ、霊感商法の壷やったんやないんか。

主・お安うしときます。

清・いくら?

主・八百万円。

清・八百万円!

主・戦国時代に作られた霊感商法の壷なんて、めったにお目にかかれへん。

清・骨董屋が霊感商法の壷、売ってどないすんねん。……それにしても、お前、マッサージ、えらいうまいな。元は骨董屋とは思えんぐらい、気持ちええで。

主・へえ、ツボはよう心得ておりますんで。