計画をねり、日をさだめ、全身の気力をふりしぼって、相手にぶつかって行く

大阪万博太陽の塔を創出し、

芸術は爆発だ!」

などの言葉を残した芸術家、岡本太郎さんの肉声を使ったコマーシャルを、最近、よく目にします。いえ、耳にして注目してしまいました。

好きなことを仕事にして生きている人はほんの一握りしかいない、という点は、数十年前と変わらないということかもしれません。

 

池波正太郎さんの《仕掛人・藤枝梅安》シリーズ(講談社)を、最近、読み返しています。

以前、旭堂南左衛門さんの《お紺殺し》を初めて見たときに、

「この人、二、三人、川底に沈めているのではないか……」

と思ったという話は、ブログにも掲載したかと思いますが、

「池波さんも、何人か人を殺しているのではないか……」

と、これもそう思ってしまうほど、仕掛人、暗殺者の心情が巧みに描かれています。

その《仕掛人シリーズ》の端緒ともなる『殺しの掟』(講談社)に収録されている『梅雨の湯豆腐』には、仕掛人で楊枝職人の彦次郎が、楊枝をつくる楽しさに触れ、毎日の調理に面白さを感じ、そして、

「計画をねり、日をさだめ、全身の気力をふりしぼって、相手にぶつかって行く」

殺しの過程に充実感を覚えていることが述べられています。

 

芸術芸能の世界で生きていらっしゃる方は、好きなことを仕事にしている人の代表だと言えます。

皆が皆、人殺しの心情を想像できるとは断言できませんが、楽しさや面白さ、充実感が得られることを知っている人ばかりではないかと思います。

そう考えると、特別に爆発はしなくても、目の前に好きな仕事が横たわっていることに気がつくかもしれません。

 

アタシも、

「計画をねり、日をさだめ、全身の気力をふりしぼって、相手にぶつかって行く」

ことに関する面白さはよく知っているつもりですが、これがなかなかうまくいきません。

 

そんなアタシを見ながら、例の友人は、

「キミの場合、想像力が欠如していることろに問題があるように思うんだが、想像力が欠如していると、それも想像できないしね……」