朝、職場で、エレベーターが降りてくるのを待ちながら、身体を動かしている女性がいらっしゃいました。
そこへ来合わせた私に、
「ちょっと、身体を動かしておこうと思いまして……」
照れ隠しのようにおっしゃりながら、エレベーターに乗られましたので、私もその後に続いて乗ってから、
「朝、身体を動かすのは大事ですよね。私も、朝、起きたら簡単なストレッチをします」
と応じますと、
「そうですよね。身体が目覚めないと一日が始まりませんものね」
と、笑顔で答えられましたので、
「でも問題は、脳みそが目覚めないんですよね」
そう申し上げますと、思わず声を出して笑った彼女が、
「もう、脳みそも十分目覚めているようですね」
「いえいえ、仕事に必要なところは、ずっと寝たままで……」
そのタイミングでエレベーターが止まり、女性は笑いながら、
「失礼しました」
と降りていかれました。
そのとき、私は初めて自分がエレベーターから降りそびれたことに気がつきました。
アタシの脳みそは、仕事に必要なところは目覚めぬまま、まったく別の脳みそだけが、いつも目覚めているようです。
(え? そもそも仕事に必要な脳みそがオマエにあるのかって……?)