今年、没後50年、生誕130年ということで、『細雪』の作者である谷崎潤一郎さんが注目されています。
妻がありながら、恋慕した人妻と結婚を果たしたという谷崎潤一郎さんですが、作家という人種のサガかもしれません。
背徳をテーマに小説が書けるのは、恋愛に関わらず、世間一般の常識やモラルにとらわれないサガが、作家の条件でもあるからです。
「自分が生きるためなら、悪事を働く者に悪いことをしてもよい」
ということを老婆の言葉から悟った下人が、その老婆から衣服を剥ぎ取って逃げる話です。
夏目漱石さんの『こころ』は、友人を出し抜いて好きな女性を得た先生(私)の行為が、その友人を死に追いやったという話です。
森鴎外さんの『舞姫』は、国費でドイツに渡った豊太郎が、現地で知り合った踊り子を妊娠させながら、その踊り子を置いて帰国する話です。
こんな小説が、文学として国語の教科書に掲載されていますが、どうせなら、
「これらの小説の登場人物、下人、先生(私)、豊太郎の中で、もっとも罪深い者は誰か?」
ということを考えるのも面白いのではないか……
そんなアイデアを例の友人に話しましたところ、
「そういうキミは、これまでに犯してきた自分の罪の重さがわかっているのか?」
そのとき、その友人の鋭いツッコミに、アタシは、はじめて反論することができました。
「アタシに罪などない。なぜなら、そういう機会に恵まれたことなどないから……」
だから、小説家になれていないんでしょうね……
(ウソつき!)
え? 誰?