三題噺・笠地蔵

お題をいただきました。

『募金』『地蔵』『忘年会』

 

清・皆、揃てるか……

喜・揃てる、揃てる。

清・何や、喜ィ公、その格好は?

喜・見たらわかるやろ。真っ赤な服と帽子ときたら……

清・やっぱりサンタクロースか……

喜・そうや。子供らの施設に米やら餅やら、ソリに乗せて届けるんやったら、サンタクロースやろ。

清・あほ。もうクリスマスは終わったんや。今日は12月31日や。

喜・けど、わいら、これからこっそり子供等にプレゼント、持っていくんやろ。

清・これからわしらがやるのは、サンタクロースやない。

竹・そうやそうや。

清・竹やん。

竹・何や。

清・そういうお前の格好はなんやねん。

竹・鯛に釣り竿……

清・それ、えびっさんとちゃうか。

竹・お正月と言えば、やっぱり七福神やろ。

清・まだ、年、明けてへんねんで。大晦日の晩やねんで。それに、七福神やったら、一人足りひんぞ。

竹・弁天さんだけ、あとで皆で買いにいく……

清・あほ。あとで弁天さんを買いにいく笠地蔵がどこにいてんねん。だいたい、ゆんべの忘年会で、新しくできた養護施設にいてる子供等の餅の心配を始めたんは、竹やん、お前やろ。

竹・いや、わいやない。それを最初に言い出したんは、喜ィ公や。

喜・こないだ、わいが角の焼き芋屋で買うた焼き芋を食べようとしたら、そこの子供が一人、じいっと見てたさかいに、ちょっと分けたったんや。そしたら子供等がバラバラ集まってきて、わい、焼き芋、食べられへんかったんや。(泣く)

清・サンタクロースのかっこして泣くな!

竹・それを聞いて、ほな、皆でなんぼか出し合うて寄付でもしたらどうやと、ずくねん寺の坊主が言うたさかいに、銭金を寄付するだけでは芸がない。正月やさかい、一つめでたい七福神のかっこうして行こかて、わいが言うたんや。

清・ああ、そうやったな。ほんで、いやいや、お正月の餅を届けるのは大晦日の晩、笠地蔵と相場が決まっておるてなことを至極もったいぶって言いながら、あの、ずくねん寺のやまこ坊主、般若湯寺を呑んでは鍋の中の肉を掬い上げて、施設の子供等も掬わなあかん……てな、しょうもないシャレ言うたんやったな……あれ? そのやまこ坊主がまだ来てへんのんか?

竹・お、噂をすれば、来たで、やまこ坊主。……おうい、やまこ坊主!

坊・誰がやまこ坊主じゃ。そないな奴には、笠は貸さんぞ。

竹・また、しょうもなシャレ言うて。

清・竹やん、もうええがな。なんやかや言うても、こないして笠を六つ、用意してきてくれてるんやし……それ、ソリか?

坊・そうじゃ。笠をかぶった六体のお地蔵様が、雪の中をソリを引いていくんじゃからな。

喜・あ、それ、ええな。わいに先頭、引かせてくれ。

清・あほ、どこの世界に笠をかぶってソリを引くサンタクロースがいてるんや。

坊・なに? (改めてサンタクロース姿の喜六を見て)いや、これでは餅や米は届けられぬ。

清・夜中にこっそり届けに行くんや。別に人目につくわけやないやさかいに、そないに目くじらを立てんでもええやろ。

坊・いや、どう考えても、ソリが合わん。

                                  デンデン