日本人が忙しく働いているのは、勤勉な国民性によるものだという考えがかなり昔からあるように思いますが、果たしてそうでしょうか?
たとえば、クリスマスにはケーキが販売されますが、クリスマスイブには家族でケーキを食べよう、てなキャンペーンを誰かが考えついて始めたからですしょう。
だからケーキ工場で働いている人は、祝日、天皇誕生日であっても休めません。
コンビニエンスストアーなんか、毎年、寒い中、店の前にクリスマスケーキを並べて専属の店員を配置しています。
通常のシフトとは違って、店員も休めません。
そんな光景が25日にまで見られるようになって、売れ残ったケーキを安く売っているなんてことが始まったのは、それほど古いことではありません。
デパートやスーパーマーケットの初売りも早くなりました。
従業員に正月休みはありません。
節分には豆まきの他に恵方寿司なるものが加わり、バレンタインデーにはホワイトデーがセットになって、チョコレート以外のなんやかやも販売されるようになり、今年はハロウィーンもそうした仲間に加わったようです。
販売だけではありません。
ある私立高校では、朝の通学時間に正門前で生徒を迎えるようになり、それが最寄り駅前の生徒指導、さらには駅構内にまで先生が入るようになったそうです。
学習塾では、今は当たり前のように、受験当日の朝、学校の前で受験生を集めて励ますなんてことをやっていますが、昔はそんなことはしていませんでした。
日本人が忙しいのは、勤勉だからではなく、知らぬ間に資本主義のシステムに追われるようになったからだと思います。
この点については、日本の文豪、かの夏目漱石先生も、その著書『吾輩は猫である』で、
「人間は自分で用事をこしらえては忙しい忙しいと言っている」
てな趣旨の言葉を猫殿に言わせています。
三題噺にうつつを抜かし、コンビニエンスストアーの店先で売られているクリスマスケーキを横目で眺めるアタシにすでに年内の仕事はなく、その侘しい状態を糊塗するための、
「アタシは、そんな日本社会に一石を投じているんだ!」
という発言に、
「それは、資本主義のシステムから弾かれたキミの言い訳だよね」
と、例の友人はやっぱり見抜いていました……