三題噺・福袋

明けましておめでとうございます。

 

大晦日にいただいたお題『除夜の鐘』『福袋』『ひまわり』を、そのまま新春の三題噺にしてみました。

 

和・(ゴーン)これ、今、いくつじゃ。

小・はい…… ええと……(片手で指折り数える)

和・指を折って数え直している場合ではないぞ。

小・はい……(両手で数えようとする)

和・両手でやってもおんなじじゃ。とにかく除夜の鐘が鳴り終わる前に、全部入れてしまうのじゃ。(ゴーン)

小・はい…… 和尚様。

和・何じゃ。

小・これ、福袋ですよね。

和・そうじゃ。除夜の鐘が鳴り終わると同時に、この寺で初詣客に売り出される、日本で最も早い、百八袋限定福袋じゃ。(ゴーン)

小・あの……

和・何じゃ。

小・袋の数が合いません。

和・何? 袋の数?

小・はい。ざっと見ただけで、三百袋…… 百八袋限定にしては、多すぎるのではないかと……

和・客にはわからん。(ゴーン)

小・和尚様。

和・何じゃ。

小・お寺が、こんな阿漕な儲け主義に走ってもよいのでしょうか?

和・今さら何を言うか。寺といえども、知恵をしぼって金を稼がねば生きていけぬ時代じゃ。

小・それなら、中に入れるのはお経だけでいいように思いますが…… 

和・じゃからお前は考えが足りぬというのじゃ。どうせなら、いろんなグッズをたくさん入れて、少しでも高う売るほうがよかろう。

小・それにいたしましても、一緒に聖書を入れてもよいのでしょうか。(ゴーン)

和・世界平和を願うのに、宗教の壁はない。

小・和尚様。

和・何じゃ。

小・世界平和を願うのではなく、金儲けに走るの間違いではないかと……

和・たわけたこと申さずに、手を動かせ。

小・たわけているのは和尚様のほうかと……(ゴーン)

和・何ぞ言うたか?

小・いえ…… 和尚様。

和・何じゃ。

小・おみくじ、大吉ばかり入れてよいのでしょうか?

和・大凶を入れると、来年の売り上げが落ちるであろう。(ゴーン)

小・和尚様。

和・何じゃ。

小・お守りは、家内安全、交通安全、恋愛成就の三つでよろしゅうございましたか?

和・商売繁盛を忘れるな。(ゴーン)

小・はい…… 和尚様。

和・何じゃ。

小・この、笹は、どうして入れるのでしょうか?

和・商売繁盛で笹持って来い。

小・商売上手で金もって来い。(ゴーン)

和・何ぞ言うたか?

小・いえ…… 和尚様。

和・何じゃ。

小・この、ひまわりのタネはどうして入れるのでしょうか?

和・煎って食べると、般若湯のつまみになる。(ゴーン)

小・和尚様。

和・何じゃ。

小・それなら柿の種の方がよろしいのではありませぬか?

和・おお、それはよい考えじゃ。お前、たまにはいいことを申すな。他に、何ぞないか?

小・何ぞと申されますと?

和・金儲けのタネじゃ。(ゴーン)

小・あれ?

和・いかがいたした?

小・除夜の鐘が、とっくに百八つを越えているようですが……

和・ほんにそうじゃな。

小・……あ! わかりました、和尚様。

和・何がわかった。

小・煩悩が、百八つを越えております。(ゴーン)

                                  デンデン

 

本年もよろしくお願い申し上げます。(ゴーン)