安東能明さんの連作短編集『撃てない警官』(新潮社)に所蔵されている『随監』に登場する巡査部長は、警察組織を信用していません。
でも、地域の信頼の厚い交番勤務の警察官です。
読み終わって、
「かっこええなあ!」
と思いました。
警察小説というジャンルで扱われるのは、事件の解決とともに警察組織の矛盾や歪みといったテーマです。
フィクションだとわかっていますが、そのほとんどは、
「警察って信用できないかも……」
と思ってしまうような内容です。
それだけに、警察組織の中にいながら警察官としての本分を尽くそうという登場人物に感動してしまうのかもしれません。
あるいは、自分自身が組織から離れて生きる道を選んでいるせいかもしれません。
反発しているにせよ、肩を叩かれながらもぶらさがっているにせよ、会社勤めを続けておられる方は素晴らしい人だと、アタシは思っています。
まあ、会社勤めをされている方からは、
「組織に頼らずに生きているところがうらやましい……」
などと言われることもありますが、お互いにないものねだりをしているだけなのかもしれません。
だからこそ、こうした警察小説なんかが読まれるのでしょう。
「そんなことがよくわかっているのに、どうしてキミの小説はこんなに面白くないんだ」
と、例の友人に言われます。
自信を失って求人雑誌なんかをこっそり覗くと、たいがい年齢制限に引っかかってどこも雇ってはくれないようです。
こうなったら、本気で小説家を目指すか、三題噺家になるか、歌手になるか、俳優になるか、最近はアナウンサーの教室にもこっそり通ってあわよくばラジオのパーソナリティーなんてのもいいかな、てなことを、いまだに夢想しております。
例の友人は、
「キミの場合、小説家とか三題噺家とかを目指すのではなく、夢想家なんてのが一番いいかもしれないね」
かっこいい人間を描いた小説を紹介しようと思っておりましたが、気がつくと、やっぱりかっこ悪いブログになってしました。
唯一、
「 大企業に就職してきちんと働け!」
なんて言わないところがかっこいいかも……
いえ、そんな偉そうなことは言えない立場にあるというのが真実で、やっぱりかこよくはありません。
『随監』で、どんな事件が発生し、どんなストーリーが展開するのかというところは、お読みくださればよろしいかと思います。