会話の選択肢

「私、会話が下手で……」

とおっしゃる女性に、

 

たとえば、

「昨日、妻とこういうことで喧嘩になって……」

という友人や同僚の話に、

「そりゃ、キミ(奥さん)が悪い」

とズバッと審判を下すか、

「うちでも夫婦喧嘩をよくするけど、たいがいオレが謝ったら収まる」

と解決策を提案するか、

「あのな、夫婦喧嘩イヌも食わんちゅうぐらいや。やるだけ損や。少々気に入らんことがあっても、我慢するんや。人間、辛抱を忘れたらあかんで」

と説教垂れるか、

「それで、喧嘩は収まったの?」

と相手に話の続きを促すか、

「それは大変だったね」

と相手の気持ちを気遣うか、

「そうそう、そう言えば、わし、さっきネコの子踏んでな……」

と話題を変えるか、

「こないだ、うちでも夫婦喧嘩になって、それがまあ、ちょっとしたことであいつが急に機嫌を悪うして、それぐらい気にすんなと言うたんがまた気に入らんかったようで、それで今日もわいの朝メシを作ってくれへんねや。おかげでコンビニでパン、買うて何とかしのいんだんやけど、昼まで持たへんかったら困るんで、もうちょっと何か買うておこかと思うて、おにぎりを買うたや。ツナマヨ……」

と、それをきっかけに自分のことを話すか、

「キミも一つどうや」

と、ついでに相手に勧めるか……

 

会話の選択肢なんか考えずに、多くの人はいずれかのパターンを習慣的に用いているのではないかと思います。

その結果が、現在の人間関係に少なからず投影されているのではないかとも思います。

ですから、相手によって、あるいは状況によっていずれかのパターンを選択することが会話には大切です。

 

てなことをその女性に申し上げましたところ、

「でも、アナタはその選択肢をよく間違えていらっしゃるでしょ」

そこでアタシは思わずヒザを打って、

「あんさん、ほんまは会話の上手なお人やおまへんか」

すると彼女は微笑んで、

「それを言ってほしかったの」