三題噺・古着屋

土曜日に、4月2日(土)の三題噺のチラシを伝楽亭に受け取りに参りましたところ、公開ネタ練習会をやっていました。

落語の練習過程など、めったに見られるものではありません。(昔、学生時代には毎日見ていましたが……)

映画のメイキングというほどのことはありませんでしたが、『金明竹』を二回聞け、音曲、踊りに芝居の入った『質屋芝居』なんて珍しい落語を見ることもできました。

 

それが終わってから、よせばいいのに、

「そしたら、三題噺のお稽古を……」

と高座に上がって、お題を頂戴して考えているうちに、

「ほな、打ち上げ行きまひょか……」

てなことで、三題噺はうやぬやになってしまいましたので、遅ればせながら、創ってみたいと思います。

 

そのときに頂戴いたしましたお題は、

『古着屋』『宮島』『クッキー』

です。

 

咲・ちょっと、あんた、なにぼーっとしてんの。

清・ああ、いや、これな(古着を見せる)……

咲・ああ、それ、宮島屋さんとこから回ってきた古着やないの。それが、どないしたんや。

清・いや、あそこ、宮島屋さん、古着も差別化せなあかん言うて、こないなええ古着ばっかり扱うようになって、結局、店、畳まなあかんようになったやろ。

咲・それはやり方が下手やったんよ。

清・そうか? 昔からの古着屋の看板、うちはなんとか下ろさんですんでるで。

咲・そやけど、この先、どうなるかわからへんやないの。

清・まあ、確かに商売っちゅうのは、時代に合わせてなんとかやりくりするもんやろうけど、下手にやりなれんことに手ィ出すと、店を潰してしまう。

咲・と言うて、時代に乗り遅れたら、たちまちやっていけんようになる……

清・商売っちゅうのは、むずかしいもんや。

咲・そらそうやけど…… まあ、商売の心配なんて尽きへんもんや。そんなことばっかり考えてんと、今、お茶、入れたさかいに、ちょっと、一休みしまひょ。

清・わし、ずっと一休みしてるようなもんやで。

咲・まあ、そう言わんと、はら、今日はクッキーがあるさかいに。

清・クッキーって、これ、どないしたんや。

咲・おさよちゃんからもろうた、お土産。

清・お土産って、おさよちゃん、どこに行ったんや。

咲・ずっと九州を回ってきたんやて。これ、熊本のクッキー。

清・あ、ほんまや。クマモンや。けど、このクマモン、ほんまもんか。なんや、ちょっと、不気味やぞ。

咲・ああ、そない言うたら、九州に行く前に、おさよちゃん、中国にも行った、言うてたわ。

清・ははあ、道理で包装紙に漢字で苦魔物(クマモン)て、書いてあるんやな。

咲・ほんまや。けど、おさよちゃん、ええなあ。

清・ばちもんのクマモン土産くれるからか。お前も変わった奴やな。

咲・いいやいな、違うがな。おさよちゃんみたいに、あちこち旅行でけたらええなあ、と思うてんねよ。

清・まあな。

咲・なあ、あんた。

清・なんや。

咲・たまには私らも、夫婦で九州一周旅行なんて、行ってみいへん?

清・あほ、どこにそんなゆとりがあんねん。

咲・そやから、古着を軒先にぶら下げるだけやのうて、レンタルするとか、古着の他にブランドの中古品とか、宝飾品とか、そんなんも手広う扱うたら、儲かるやないの。

清・そやから、そんなん、あかん、言うてるやろ。

咲・なんで。きょうび、そんな商売やってるとこ、ぎょうさんあるで。

清・うちは、古着屋や。身丈に合わん商売はできん。

                                  デンデン