傾聴は忍耐なり

昨今、傾聴の重要性が説かれています。

相手によって、あるいは場面によっては一人の人間を救うことにもなるほど、大切なコミュニケーションツールの一つです。

でも、それがわかっていながら、つい、落語的な発想をしてしまいます……

 

「コミュニケーションというのはな、ただ話をすればよいというものではない。ときには、相手の言うことを黙って聴くことも大事じゃ。相手の言葉に首肯き、あるいはその言葉をおうむのように返し、しかし、そこにこちらの思いを差し挟んではならん。たとえ、話の途中で疑問に思ったことであっても口にしてはならんぞ。それが、相手の思考を促すためであってもじゃ」

と甚平さんに教えられて家に帰った喜ィ公が、嫁はんに、

「今日はどこで油、売ってたんや」

と言われまして思わず言い返しそうになりましたが、

「ここが傾聴」

と、早速、教えられたとおりの傾聴を試みました。

「また、どこぞで一杯やって、わたしの悪口を言うてたんやろ。休みの日ぐらい、家族をどっか連れて行けとまでは言わへんけれど、せめて家におって子供の遊び相手ぐらいしてくれたらええのに、いや、今日も会社関係のつきあい、これも仕事やなんや言うては、家でじっとしてへんやないか。会社関係や言ふても、あんたみたいあなあんけらそが会社の女の子になんか相手にされへんやろから、別に妬くようなことは言えへんけれど、あんた、知ってるか、仕事のでけへんダメ社員に限って、忙しい忙しい言うて、用もないのにあちこちかけずり回るそうやないか。けど、ほんまに力のある人は、家族と過ごす時間を一番大切にしてるっちゅうやないの。それを思うたら、ほんまにあんたは能無しのろくでないやな。ハッハッハッ……」

「黙って聴いてたら好き放題言いやがって!」

                                  デンデン