篠田節子さんの『死神』(文春文庫)を読みました。
自治体所轄の福祉事務所に勤めるケースワーカーの仕事を題材にした短編小説集ですが、きれいごとのお役所仕事では済まないあれやこれやが書かれていて、非常に面白く思いながらも、人生について考えさせられてしまいました……
いえ、反省させられた、と言った方がいいかもしれません。
特に最後の、かつて人気をはくした作家が登場する『ファンタジア』には、
〈「まもなく四十になろうという男が、夢を食って生きてはいかれませんからね」〉
とか、
〈妻と六人の子供がありながら、仕事もせずに三千枚の大河小説を同人誌に発表したと自慢する四十男。
八十歳間近の母親に身辺の世話をさせながら、その母の年金にたかり、四十数年間売れない絵を描き続けている画家。
妻に離婚され、ライトバンに幼い子供二人を乗せて、毎月、全国のレコード屋とスナックの営業に旅立つ演歌歌手志望の男。
数え上げればきりがない。自称アーティストは、昔からヤクザと並んで、福祉事務所にとっては困った客なのであった。〉
とか、フィクションではなく他人事ではなく、アタシのことが書かれているんじゃないかと思ってしまいました。
そういえば、昨日の『別嬪寄席』に出演していた後輩から、
「先輩、ちゃんと仕事してるんですか?」
と言われました。
そのときは、
「し、してるよ……」
と、あらぬ方に目を向けながら答えたっけ……