新明解四字熟語辞典(三省堂)には、『戯作三昧』が載っています。
言うまでもなく、芥川龍之介先生の小説のタイトルになっている言葉です。
これもきっと昔の中国の聖人の言葉から生まれたのか、あるいはそれらしい逸話があるのかと思いきや、それらしい出典がありません。
用例も、そのまま芥川龍之介先生の『戯作三昧』から引用されています。
ということは、芥川龍之介先生が小説のタイトルにされた造語がそのまま四字熟語として認められたということです。
『万緑の中や吾子の歯生え初むる』
という俳句の、
『万緑』
も、作者、中村草田男先生の造語だそうですが、一発ギャグの流行語ならいざしらず、長く使われる造語を生み出すのは並大抵のことではありません。
もっとも、『戯作三昧』の他にも、『贅沢三昧』『読書三昧』『風流三昧』『放蕩三昧』などの四字熟語があり、『三昧』には、〈〜の限りを尽くす〉とか〈そのことに夢中になって他を顧みないこと〉とか〈一つのことに心を集中して無念になること〉といった、もともとの意味があるようですから、これに何かをつければそれらしい四字熟語になるということかでもあるかと思います。
ですから、辞典には載っていませんが、『映画三昧』だの『旅行三昧』といった言葉も耳にするわけで、『英語三昧』とか『落語三昧』とか、今日なんか『四字熟語三昧』で『カラオケ三昧』なんてのも……
(え? 四字熟語になってない……)
失礼しました。