陰陽師安倍晴明の母が狐であるという話は、いわゆる『異類婚譚』という話型で、決して珍しいものではありません。
昔話の『鶴の恩返し』などは、その代表例ですが、そうした『異類婚譚』は、日本だけの専売特許でもないようです。
今日のブログのテーマを何にしようかと思いながら、さっきまで全部見てしまった読売テレビの金曜ロードショウ『陽だまりの彼女』(三木孝浩監督)も『異類婚譚』です。
ということは、古今東西、『異類婚譚』は、時代も国も超えて人間が発想したモチーフであり、同時に人間が好む物語のパターンだと言えます。
でも、異類が『異類婚譚』を発想することはありませんから、人間だからこそ『異類婚譚』を生み出すことができたということかとも思いますが、人間の潜在意識の中には、『異類婚譚』のDNAが組み込まれているということなのかもしれません。
中島敦さんの『山月記』では、生き物はもともと別の何かであったのが、いつのまにかそれを忘れているのではないかということを、虎になった主人公、李徴が語っています。
これは、人間はみんな自分が元は何かということを知らぬままに人間として生きているということで、もし、そうしたことが科学なんかで証明されでもしたら、世の中、とっても面白くなるのではないかと思います。
「あなたが元はなめくじであったことが科学で証明されました」
なんてことを言われでもした日には、世の中、異類婚ばかりということになってしまうのではないかと思います。
いえ、それより、自分が元は何だったのか、という点に注目される方が増えるのではないかとも思います。
どうせなら、虎とかライオンとか言われたいところですが、案外、
「アータは、実に珍しい未確認生命体です」
なんて言われるかもしれません。
でも、自分が未確認生命体だと確認されたら、もはや未確認生命体でなくなるのではないかと思いますが、その辺りの基準は、まだ未確認だったりして……