選ばれし者

「自分は選ばれた人間である」

という台詞は、尊大で傲慢な人間が口にする言葉と相場は決まっているようですが、これも使い方によって、誰かを励ます言葉になります。

 

他にもスタッフがいる職場で、自分にだけ別の仕事を依頼されたときに、

「どうして私に……」

と、何だか損な役回りを押し付けられたような感覚を持つ人がいます。

そういう人に、

「すばらしい。あなたは選ばれた人間なんですね」

と申し上げますと、たいがいの方は笑って、少し前向きな気持ちを持って下さるようです。

 

実際、どうして自分がこんな余計な仕事をしなければならないんだ、といった不満な気持ちを持って義務的に仕事をこなそうとしているのか、それとも積極的に取り組もうとしているのか、という姿勢の違いが、将来、ほんとうに選ばれし者となるか否かの別れ道になるのではないかとも思います。

 

まあ、そんな仕事が一つも回ってこないアタシは、きっと期待されていないんだろうな、という軽い失望感を抱きながらも、

「選ばれないということは、ここは本来オレがいるべき場所ではないということだ」

と、例の友人にちょっと強がって語りましたところ、

「いや、そうではない」

と、力強く応じてくれた彼は、

「キミの場合、選ばれないという選ばれ方をしているということだよ」

と言ってくれました。

けれども、ほめられたのかけなされたのか、なんだかよくわからないので、とにかく余計な仕事を回されなくてよかったと思うことにしました……