先日、紫陽花に目を留めておりましたおり、女性の理科の先生とお話する機会がありました。
「植物だけではなく、光合成をする動物もいますよ」
「なるほど、人間も、朝、目覚めたら日光を浴びるのがいいと言われますよね」
「ですから、人間も光合成ができるようになるかもしれませんよ。光合成ができたら、いちいち食事を摂らなくても水があれば十分生きていけますから、ダイエットにもいいでしょ」
「なるほど…… ただ、そうなると、体の色は、やっぱり緑色になるんでしょうね」
「ああ、そうですね。でも、そうなったら、お化粧ができません」
「日光を遮って光合成ができなくなりますもんね。食を取るか美を取るか、女性としてはつらいところでしょう」
「そうなんです」
と、彼女が微笑んだところで止めておけばよかったのに、つい、
「だけど、大丈夫ですよ。青蛙おのれもペンキ塗り立てか(芥川龍之介さん)、なんて俳句もありますから……」
「ペンキ……」
以後、その先生とお話しする機会は完全に失われてしまいました。
その日、雨に打たれる紫陽花を、ボクはただ見つめてばかりいました……