「細かいところが気になるのが、ボクの悪い癖」
とは、『相棒』の主人公、水谷豊さん演じる右京さんのお決まりの台詞ですが、
「ボクの良い癖」
などとおっしゃる方はいません。
わざわざ
〈悪い癖〉
と言うまでもなく、〈癖〉はよくないもの、と相場が決まっているようです。
昔、泣き出した赤ちゃんを抱っこすると、
「抱き癖がつく」
と、泣き出した赤ちゃんをすぐに抱っこしてはいけない、といった風説が言われました。
でも、私の母は、
「子供は、抱っこするだけでいい」
という考えを持っていました。
先日、転職を考えておれる方が、
「でも、転職癖がつくのでは、と言われて……」
と、おっしゃっていましたが、その職場で笑いがとれなくなると転職するアタシにそんな話をするのは、間違っているように思いながら、
「そんな否定的な表現にとらわれるのは、いかがなものかと思います」
と、自己弁護してしまいました……
『〜癖がつく』
という表現は、曲者です。
あたかも、
「寝癖がつくと困る」
といった軽いニュアンスで、重大なことを否定的に捉えさせる表現です。
別に、『寝癖』がついたからといって、それが一生取れないわけではありませんし、仮に毎日寝癖がついたままであったとしても、世の中、それが却ってトレードマークになっているような方もいらっしゃいます。
『抱き癖がつく』
と言われて納得するのは、すぐに子供を抱き上げることを厭わしく思う親の身勝手さを正当化する言い訳でしかありません。
その証拠に、『抱き癖』のついたままの大人はいません。
『転職癖がつく』
という台詞も、実は転職されたくない上司やら家族やらが当人を思いとどませるための口実でしかありません。
熟慮の上、たった一回試みただけでついてしまう癖などありません。
むしろ、
『〜癖がつく』
と言う台詞を、自分を正当化するためや誰かの行為を妨げるために使う癖がついてしま方が、よくないのではないかと思います。
「キミの場合、そうして歪んだ見方をする癖がある」
と、例の友人は、いつもの癖でアタシをオチにしてくれます。