事実は小説より奇なり。
とはよく言われる言葉でございますが、世の中、落語にしたら面白いんやなかろうかてな出来事もございまして、たとえば、某反社会勢力のメンバーが、対立する反社会勢力のトップに、サインくれ、と詰め寄った事件があったそうでございますが、あれ、ひょっとしたら、ほんまにサインがほしかったんやないかいな、と思いまして、それやったら色紙に気安うサインしてやったら、抗争たら物騒なことにならんでもええんやないかいな、てなことも頭に浮かびました。
もし、それでサインに応じようものなら、たちまち命を狙われることになるかもしれまへんから、それやったら、そこで一度色紙を預かって、後日、郵送するという口実で住所なんか聞いておくと、ほのぼのとした交流が芽生えるんやないかと……
まあ、一応、嫌がらせとちゃうんかと言われておりますが、それにしても
「サインくれ!」
という発想は、物凄いと思います。
なんならいっそ、握手してくれという方が……
「すんません」
「誰や…… あ! お前、二組のもんやな。何しに来たんや!」
「いや、一組の担任のサイン、もらいに来たんや」
「なんやと、二組のお前が、なんでわしら一組の担任のサイン、もらいにくんねん」
「いや、ほんまは、わい一組の担任の先生に担任してもらいたかったんやけど、どうやら間違えて二組になってしもうて……」
「ほな、今、サインなんかもらわんでも、来年のクラス替えのときに希望したらええやないか。わしら、反社会勢力やあらへんねやさかい」
「けど、それがでけんさかいにお願いにうかがいましたんや」
「なんでや」
「わい、転校しまんねん」
『転校』『反社会勢力』『サインくれ』
てな、三題噺でどないでっしゃろ……