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噺のマクラに枕の話

「石に枕し、流れに漱ぐ」と言うべきところを「石に漱ぎ、流れに枕す」と言ってしまって、その誤りを指摘されても「石に漱ぐのは歯を磨くためで流れに枕するのは耳を洗うためだ」と言った孫楚の故事から生まれた四字熟語、『漱石枕流』からペンネームを考案した夏目漱石先生の逸話は有名です。

 

枕を使った四字熟語は他にもありまして、『枕経籍書(ちんけいしゃしょ)』と申しますのは、死人の枕元であげる枕経とは関係ありません。

経書を枕にして書を籍(し)くということで、読書にふけることのたとえです。

 

『枕戈寝甲(ちんかしんこう)』という四字熟語では、枕にするのは武器である戈で、ついでに鎧も着て寝ておりますから、いつでも戦えるように準備を怠らない、ということのたとえになっております。

 

四字熟語でなくても、たとえば『歌枕』と言えば短歌、和歌で特定の語につけられる、たいへん雅な言葉で、母につく「たらちねの」なんかはご存じの方もおられるかと思います。

 

『枕絵』なんてなりますと、いわゆる春画を指しておりまして、これが『枕を重ねる』とか『枕を交わす』なんてことになりますと、どんどん艶っぽい想像を掻き立ててくれますが、こうやって存分に『枕を振って』おいて、肝心のお噺に入って参りますのが落語でございます。

 

ここに紹介いたしましたマクラを、皆様、どうぞ、存分に使ってやってください。

(え? マクラだけで本題はないのか!)

って…… わかりました。

それでは一席……

 

「お前、失恋したぐらいで、そんなに枕に顔を埋めて泣くことはないだろう」

「だってぇ、お先真っ暗だもん」

                                  デンデン

(これもマクラだろ!)