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昔、まだ正社員として勤めていた頃、年上の同僚とよくスナックに行ってはカラオケで遊んでいました。

たとえば、最初に〝あ〟の字のついた曲から始めて、〝い〟〝う〟〝え〟と、五十音順に交互に歌っていくなんて遊びをしましたが、そのときに歌えなかったのが、〝ぬ〟の字が頭についた歌でした。

当時はカラオケの本もあって、それも見ましたが、知らない曲がほんの数曲並んでいるだけした。

 

考えてみれば、〝ぬ〟から始まる単語には、一筋縄ではいかないような、何やら妖しげなイメージがつきまとうように思います。

一昨日、テーマにいたしました枕詞にございます〈ぬばたまの〉は、“黒”や“闇”を引き出しますし、

「〝ぬ〟の字で始まる言葉で、そうそう立派なものはないようですね」

なんて言いながら、

 

〈ぬばたま〉〈濡れぎぬ〉〈濡れごろも〉

〈ぬらくら〉〈ぬるま湯〉〈濡れ事〉〈濡れ場〉

〈ぬりかべ〉〈ぬめって〉〈ぬらりひょん

〈抜き身〉〈盗人〉〈ぬけぬけと〉〈ぬかるみ〉〈ぬかって〉〈濡れ鼠〉

 

と調子に乗っておりましたら、

額田王(ぬかたのおおきみ)がいらっしゃいます」

と、上品で物腰のやわらかい、職場の先輩に言われて、

「ああ、それは〈ぬかったぬかった額田王〉」

なんてやっぱり調子に乗って口にいたしましたところ、その先輩に、

「私のギャグを取らないでください」