世の中に流通しております言葉は、概して善良なモノが多いように感じます。
学校の教科書や参考書なんかに堂々と登場する、そんな言葉ばかりが喧伝されているために、そうでない言葉は闇に葬られてしまうのではないかと思いますが、そうした言葉でも、案外、落語の中に居場所があるようです。
たとえば【算段の平兵衛】は、美人局を企図したあげく人を死なせてなお、それを他者のせいにするという、落語には珍しく、悪党が主人公の落語です。
ですから、
『ちょっと渋皮のむけたええ女』
とか、
『鬼の女房に鬼神』
とか、
『金の顔見てから言い方変える』
とか、
『すねに傷持ちゃ笹原よける』
とか、良い子のご本には絶対に載っていないような言葉がいくつも出てきます。
そもそも、題名にもなっている、
『算段』
や、また、オチにもなっております、
『盲人蛇におじず』
という言葉も、この落語以外でお目にかかることは、そうそうないように思います。
こういった日陰者の言葉たちが、健全な笑いを提供するかのように見られている落語の中に隠れながら生きておりますが、落語や講談といった伝統話芸を通して学校教育にも取り入れて、彼らにもっと光を当てるべきだと思っているのは、はたして私だけでしょうか!
(そや、あんただけや)
え……