折れない心

『人と屏風は直には立たぬ』

という言葉は、

〈折り曲げないとまっすぐ立たない屏風のように、人間も他人と折り合いをつけないと世の中を渡っていけない〉

という意味で、真っ正直にまっすぐ生きてはいけない…… といことを表している言葉だそうです。

 

かの夏目漱石先生の《草枕》の有名な冒頭にも、

『智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ』

とありますから、意地も互いに少しずつ折り曲げないといけないようです。

 

「世の中、『人と屏風は直には立たぬ』『意地を通せば窮屈だ』『長いものには巻かれろ』てなことを言うやろ。そやから、いつまでもつまらん意地なんか張らんと、お前も少しは折れてみい」

「何を言うんや。お前も、意地を張ってオレに折れろとしつこく迫るんやのうて、少しは折れて、折れろと言うのはやめろ」

「そやから、オレは折れてお前が少し折れろと言うてるんや」

「それが、お前が折れてない証拠や」

 

世間には、

「何事にも折れない心を持ちたい」

と、思っていらっしゃる方は、少なくないと思いますが、折れない心をお持ちの方は、案外、たくさんいらっしゃるのではないかと、感じています。

もちろん、アタシはすぐに折れるようになっております、と例の友人に申しますと、

「キミの場合は、心は折れてない。ただ、歪んでるだけや」