三題噺・能登川

昨日の《三題噺の会》でいただいきましたのは、『能登川』『柿』『紅葉狩り』です。

 

男・いやあ、今日は、ええ同窓会やった。十両能登川関が来てくれたんやからな。

能・いや、ここでは、同級生のケンちゃんや。

男・いやいや、能登川の誇りや。今は十両でも、いずれは幕内に上がって三役、横綱を倒せば、金星や。いや、金星どころか、大関横綱になるかもしれへんな。あ、先に結婚してべっぴんの嫁はん、金星が先かもしれへんな。

能・そんな、金星なんて。

男・まあ、どっちゃにしても、今日、もろたこの色紙、手形は値打ちもんやで。また、とこどき能登川に顔、出してや。

能・もちろんや。

男・うれしいな。ほんまに今日はええ日やった。ほな、またな。

能・ああ、さいなら。

楓・ケンちゃん。

能・ああ、楓。今日は、ありがとう。

楓・ううん。ケンちゃん、大変やったやろ。何枚も色紙に手形押して、サインして。

能・いや、そんなん、たいしてことない。

楓・けど、なんや元気がないように見えたけど……

能・ああ。実は、胃の具合がもう一つ、ようなくてな。

楓・そうなん?

能・まあ、元々、体が大きいはなかったから、よう食べさせられてな。特に十両に上がってからは、周りのプレッシャーもあって…… ほんまにやっていけるかどうか自身もなくなって、相撲、止めようかと思いながら、今日は同窓会にきたんや。

楓・そうやったん。……あ、そうや、(柿の実を出して)これ、うちの庭の柿の木になってたんやけど……

能・柿?

楓・うん。渋いとこばかりやない。そのうち、もっと熟れ(売れ)てくる。

能・はは……

楓・そうや。ケンちゃん、うちまで送って。

能・ああ、楓のボディガードぐらいなら、大丈夫や。

楓・ありがとう。そしたら、あそこの公園を通っていこう。

能・ああ、あの公園。

楓・紅葉きれいなのんよ。ちょっとした紅葉狩りができるわ。

能・ああ、それはいいな。

楓・あ、(落ち葉を拾って)これ。あげる。

能・ん? 何?

楓・イチョウ(胃腸)、大事にしてね。

能・ははは…… 楓はいつもそんなダジャレで笑わせてくれてたな。……もう一度、相撲でがんばってみようかな……

楓・よかった。金星もとれそうね。

能・なあ、楓。

楓・ん?

能・金星にはもう一つあるんや。

楓・何?

能・おれの金星になってくれへんか。

                                   デンデン