午前中に床屋に行って、髪を切りました。
「寒いですね」
と語りかける床屋の兄ちゃんに、
「昨日は雪が積もりましたからね」
「今日も、天気予報では、えらい雪が降るてなことを言うてましたな」
「そうそう、不要不急の外出は控えるように、なんて、テレビで言うてましたけど、そうなると、散髪に来る客も少ないのとちゃいますか」
「そうです。これが、歯が痛い、となりますと、皆、歯医者に行きますけで、散髪は別に緊急やおまへんさかいに、うちは今日も客足は悪うて……」
「おかげで、アタシも待たされずに散髪ができます」
てな会話を交わしておりましたら、新しい客が入ってきました。
薬局へ参りますと、最近は薬剤師さんが、
「数値は下がりましたか……」
と、いつ行っても、薬剤師が誰であっても、皆、同じことを聞いてきます。
アタクシは、
「ええ、まあ……」
と、別嬪の薬剤師さんの他は、たいがい言葉を濁します。
接客の際、どんな話をするかということに困っておられる方は少なくないと思います。
あるリクラゼーションのチェーン店では、本部で聞き上手であることを指導しているそうです。
昨今は、接客時の会話を推奨する風潮があるようですが、そうした風潮に流されて無理に何かを話そうということについて、口下手なアタクシといたしまては、賛同しかねます。
相手が話したいなら相づちを打ち、そうでなければ必要最低限のやりとりでもいいのではないかと思います。
でないと、不自然な会話が、却ってリピーターを逃がすことにつながるのではないかと思います。
会話も、自然に流れることが大事で、あとから床屋に入ってきた客は、理髪師相手に、子供が運転免許を取得した話や、カーナビの調子が悪いてな話をしておりましたが、床屋の主は、ただ相づちを打っているだけでした。
え?
(どさくさに紛れて、自分は無口やと言うてるけど、キミの場合、……)
え、キミの場合って、やっぱり例の友人か……
デンデン
(おい! しばらくこのパターンか!)