某三代世襲国家の、あっと驚く肉親正男氏暗殺報道に、アタクシ、太宰治先生の『走れメロス』に登場する暴君ディオニスを思わず思い出してしまいました……
(思わず思い出す?)
猜疑心にまみれたディオニス王は、側近はもちろん、家族でさえ信用していません。
どこでどんな人生を歩んでそんな人間観に至ったかはわかりませんが、
「王様、あなたは、今、しあわせですか?」
と問いかければ、答えは、
「ノー」
でしょう。
ところが、幸いにと言いますか、ディオニスは、単純な正義感に凝り固まった牧人メロスと、毎度その尻拭いをさせられているであろう献身的な友人セリヌンティウスによって、無事にと申しますか、いとも簡単にと申しますか、とにかく、眉間に深く刻み込まれたほどの人間不信から、信じる人たちの世界への宗旨替えに成功しました。
この段階で、
「王様、あなたは、今、しあわせですか?」
と、問えば、おそらくは、これまで死刑に処してきた人々に対してどのように償っていくのかというところには目をつぶって、
「しあわせ〜!」
てな答が帰ってくるのではないかと思います。
ただ、まあ、小説でございますから、あとあと報復で暗殺されるてな続編を誰も書かなければ、めでたしめでたしなんて終り方でもいいように思いますが、これまでさんざん粛正を繰り返してきた某三大世襲国家の元首は、
「王様、あなたは、今、しあわせですか?」
と、問いかけても、たやすく宗旨替えできるわけでもありませんから、猜疑地獄の中で生き続けなければならないように思います。
いなみに、王様ではありませんが、
「あなたは、今、しあわせですか?」
と改めて問われましたら、アタクシ、
「権力もお金も持っておりませんが、猜疑心に苛まれていない分、しあわせでございます」
なんて答えることになるかと思います。
でも、猜疑心に苛まれてもええさかいに、権力と財力を、一度は手にすることがでけたらええなぁ〜