かつて書店に並んでおりました短編小説のアンソロジーは、それほど面白くない作品の寄せ集めのように感じておりましたが、再びブームになっているのでしょうか、アンソロジーが書店で目につくようになりました。
やっぱり面白くない小説ばかりが並んでいるんではないかと思いながらも、恥ずかしながら、長編小説を読み通すだけの根性に欠けるアタクシ、特に、双葉文庫の『妖異』や『幻異』てなタイトルには、ついつい手が伸びてしまいます。
『妖異』には、アタクシの存じておりません作家の作品が載っておりまして、プロフィールを読みますと、大下宇陀児先生は九州帝国大学で学ばれて1966年に亡くなられており、その前年に亡くなった大坪砂男先生は警視庁の鑑識課に奉職されたこともある方で、今からすると間違いなく古い小説なんですが、
「なんて自由な発想で、なんて教養があるんだろう」
と感嘆いたします。
下手な小説を書く身といたしましては、小説に必要なオリジナリティを奪うことになっているんだとわかっていながら、昨今流行りの小説をつつい意識してしまい、さて、己になにほどの個性があるのだと考えてしまいがちでありましたが、温故知新とはよく言ったもので、古い小説から新たなオリジナリティを知らされた次第であります。
これを例によって例の友人に語りましたところ、
「でも、キミの場合、やっぱりオリジナリティは出せないよね」