先日、会話をしておりました女性が、すぐに、
「そお、そう、そう」
と受ける台詞を口にされていらっしゃいましたところから、落語の『ろくろ首』を思い出してしまいました。
夜中に首が伸びるという娘の家に婿入りすることになって、先方の家に挨拶に行くのはいいけれど、相手の言葉にどう答えたらいいのかわからないアホに、
「さよぉ、さよぉ」
「なかなか」
「ごもっとも」
の三つを教えられて、それでもいつどれを言えばわからないそやつの足の三本の指にそれぞれヒモを結びつけて、引っ張られた指で答える台詞を決めたけれども、それをネコが次から次に引っ張って…… てなバカげた噺でございます。
会話のテクニックとして、応答の台詞が一つしかないというのは、あいづちばかり打つ人と同じで、相手は、
「この人、ほんまにワタシの話を聞いてんのんかいな……」
と思われてしまいます。
そう思われないためには、『ろくろ首』に紹介されているように、三つぐらいの言葉を引き出しに入れておくのがよろしいかと思います。
ただ、『ろくろ首』のような単純なパターンだけでは、
「この人、やっぱりワタシの話を聞いてへんのんやないか……」
と思われてしまう危険性もありますので、ぼんやりしてちゃんと聞いていないときなんかには、
「ええと、それはつまりどういうことですか?」
と聞き直すフリをしたり、単調な応答の合間に、
「え? そうなんですか!」
と、とにかく驚きの言葉を入れたりしています。
こうすると、相手は、
「自分の話を聞いてくれているんだ」
と思い込んでくれるようです。
え?
(つまり、オマエは人の話をちゃんと聞いてないんやな!)