今年のノーベル文学賞に選ばれた長崎県出身の英国人作家、カズオ・イシグロさんが、ストックホルムのスウェーデン・アカデミーで受賞記念講演を行われ、
「危険なほどに分断が増大する時代に、良い作品を書き、読むことで壁を打破できる」
とおっしゃったそうです。
今朝、トランプ大統領のエルサレムをイスラエルの首都に認定してアメリカ大使館を移転させる方針は、パレスチナ自治政府をはじめ多くの反発を招いているのは、ファーストの象徴だという旨を記しましたが、これはすなわち、分断以外の何物でもありません。
今回のトランプ大統領の決断は、まさに分断によって世界は危険な状態に陥れる象徴でもあるかと言えるのかもしれません。
カズオ・イシグロさんは、そんな世界の危険な情勢を、文学の力で打破しようと考えておられるということです。
文学に何ができるのか……
という命題は、昔から存在してはいましたが、昨今の小説にそんな使命の見られる作品は少なく、多くは消耗品であることを作家自身が認めているようにも感じます。
先日、二次予選を通過できなかったアタクシの作品にも、そうした文学の力を持たせたつもりはなく、まさに消耗品の一つでしかなかったという意識を持っていたことは否定いたしません。
文学の力を信じておられるイシグロさんのノーベル賞受賞に、改めて称賛と敬意を送ります。