先代の神田山陽師に神田陽子先生が弟子入りされた頃は、講談の世界はいわゆる男社会で、
「女がなんだ!」
てな風潮だったそうですが、今や東京の講談界では、女性の講談師の数が男性を上回っているそうです。
お寺で唱えられる声明も、これまで男性のものと考えられていたそうで、女性の声明は、
「声が高い。細い」
などと言われて、なかったそうです。
落語も、昔は女性の噺家は見られませんでしたが、現在は、上方のアマチュア落語界においても〈なでしこ連合〉という、女性ばかりの噺家の集まりが活躍するようになりました。
歌舞伎、文楽、能、狂言といった伝統芸能は、いまだに男性の芸能ではありますが、これからはその中に女性が入ってやがて男性を凌駕するようになるかもしれません。
神田陽子先生のお話によりますと、神田山陽師は先駆的な方で、洋の東西を問わず新しい講談をお創りになられた方で、
「女がなんだ!」
てな時代に女性の弟子をたくさん入れられましたから、お亡くなりになるときには、女性に囲まれていらっしゃったそうです。
そんなエピソードをうかがいますと、アタクシ、非常に羨ましく思うばかりで……
ええ、わかっております。
アタクシは邪な人間でございます。